「お疲れ様だ。N様ですね、お待ちしておりました。会合室までごお知らせいたします」
エントランスの観葉植物。端整な顔立ちの受け付け嬢。優良靴を履いた達人ら。
もしかして、これは需要ではないだろうか。
己に付けてあるものは全額、それらの方よりひと回り下のみすぼらしい一品だったが、あんな自らの貧相な佇まいを真っ向から否定されて掛かる訳ではないにせよ、その瞬間だけは見て取れるがままの自分の見かけを曝け出しておるという緊張がそこにはあった。
そう、これは確かにリアルです。
エレベーターの中でぼくはずっと無言だった。
「無音」という状態には慣れている人だと自分では思っていたが、こういう時の無言には難しいものがあった。
「これじゃ太刀打ちできないかもなあ」
ストレスが真盛に達していたぼくはついつい弱音を独りごちた。その瞬間、同乗していた受け付け嬢がククッと笑う。
「あ、ごめんなさい」
しまったと思った時折二度と遅かった。自分でも何故不平を溢してしまったのかわからないが、それほど極致実態まで追い込まれているのだろうか。
口から現れる発言が洗い浚い、皆さんをスポイルしてしまうような気がして、ぼくは必死に口を噤んです。
近々エレベーターの扉が解く。http://csdsdelhi.org/